平成19年度から南極での運用を目指して、30cmサブミリ波望遠鏡の開発をしている。望遠鏡システムは雑音温度200K以下の高い感度を持ちながら、南極内陸部での人力による組み立てを考慮して、60kg以下のユニットに分割可能な構造を特徴としている。昨年度までに完成させた、望遠鏡システムを、本年度は、南米のチリに運び試験観測を行うと同時に、南極ドームふじ基地のサイト調査を実施した。チリでの試験観測においては、作業効率が低下する高地においても人力での組み立てに問題がないことを実証した。ただし、電力供給システムに、気圧が低いことによる動作不良が生じ、南極への運用においては要改善であることが判明した。サイト調査は、11月24から3月19日にかけて実施された第51次南極地域観測隊に参加することにより行った。新造した南極観測船しらせで昭和基地沖に12月中旬に入り、雪上車により約3週間の日数を要して昭和基地から1000km内陸に位置するドームふじ基地に到着した。ドームふじでは、ラジオメータによる大気の透過率の測定、全天カメラによる雲量の調査、赤外分光観測による水蒸気量の調査を実施した。大気透過率の測定に関しては、第48次隊に委託して調査で、地上最良と思われているチリ北部の砂漠地帯より優れている可能性を示していた。今回の測定は、1週間という限られた測定であったが、前回の測定結果を再現し、季節的には条件の悪い南極の夏でも、チリの最良期の冬期間と同等であることを改めて確認した。望遠鏡の不具合箇所を試験で見出し、サイトの良好性を確認したことで、南極天文学実現に近づいた。
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