本研究の目的は以下の通りである:星形成領域は、我が銀河系の内外を問わず、星間吸収量が大きいため、これまでに得られている磁場の情報は乏しい。我々は、自ら開発した広視野近赤外偏光器SIRPOLを用いて、多数の星形成領域の磁場構造の全貌を明らかにし、領域内の円盤・エンベロープ・分子雲コアの構造などと比較し、また、偏光ベクトルの分散の情報を利用して磁場の強さを求め、磁場が星形成のさまざまな段階で果たした役割を観測的に解明する。さらに、近赤外線とサブミリ波との偏光の違いの有無を明らかにする。これによって、磁場によるダストの整列の問題にも重要な知見をもたらすことが出来る。 今年度は観測を精力的に進め、以下のような注目すべき成果を得ることができた。 (1)赤外線による偏光観測から、近傍分子雲の磁場構造を検出するプロジェクトを推進した。その結果をPASJにSIRPOL特集号として5編の論文をまとめて発表した。 (2)NGC2071領域では、今回初めてコア領域の磁場構造が解明された。整列度が高いが、磁場の向きはアウトフローには揃っておらず、磁場の役割が小さいことが示唆された。 (3)NGC2024領域におけるコア領域の磁場構造の解明に成功した。磁力線は湾曲しており、大質量星形成に伴う影響と考えられる。サブミリ波から推定される磁場構造とほぼ一致しているが、最も高密度部分では両者が異なる可能性も示唆された。 (4)M16領域の磁場構造の解明に成功し、radiation implosion磁場との関連に初めて磁場の観測を考慮して言及することができた。 (5)オリオン星雲中にあるOMC-1Sにおいて、過去に同定されていないアウトフローソースを検出した。 (6)マゼラン星雲の星形成領域の磁場構造を世界で初めて赤外線で観測した。
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