LHC、ILCなど最高エネルギーの衝突型加速器(コライダー)実験における標準理論を超える(BSM)物理について、もっとも有力な超対称性だけでなく、その他のモデルについても、実験・理論の共同研究を行っている。今年度の主な成果は以下の通りである。 1.ATIC/PPB-BETSなどの宇宙線中に観測された(陽)電子スペクトルの異常が、新しく提唱されたsplit-UEDで説明可能であることを示した。このモデルで予言されるKK粒子のコライダー実験における信号事象の検討を行った。 2.宇宙ダークマターの直接探索を目指したCDMS-II実験でダークマター事象の候補として2例が報告されている。この結果と他の実験の観測結果やストレンジクォークを含む核子のシミュレーション結果から、MSSM模型でのヒッグスセクターに対する制限を評価し、今後のダークマター直接探索実験やコライダー実験での検出可能性を検討した。 3.GMSB SUSYモデルで二重項および一重項の場を加えた場合を検討した。この場合、一番軽い奇パリティ粒子がダークマターの候補になり、ダークマター直接探索実験とコライダー実験による生成実験による発見可能性を議論した。 4.ILCにおけるBSM物理のための測定器の最適化を行っている。特に、ハドロンジェットの究極のエネルギー分解能を実現するための解析手法と、それに最適化されたカロリメータの検討を行っている。これまでに行ったテストビーム実験などの研究成果を取り入れてILC測定器の提案を行い(ILDLoI)、次のステップに進んでよいとの評価を受けた。
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