研究概要 |
放射光源として使われている加速器内の電子ビームにフェムト秒レーザー光を照射すると100フェムト秒(femto second,10^<-15>sec)のパルス幅を持つ極めて輝度の高い光子エネルギー数100eV〜数1000eVのX線が発生する。 本研究の目的は,この「レーザースライシング」現象を元にしてフェムト秒放射光X線パルス光源の立ち上げに必要な要素技術を確立する。そしてこの技術を国内の放射光施設に提供し,フェムト秒の時間幅で様々なX線分光,回折,発光,散乱測定が可能な研究環境を用意することである。 本研究では「レーザースライシング」などのレーザーと放射光を組み合わせた高速時間分解X線分光測定に必要な要素技術の開発を行っている。そのため高速パルスのレーザーが必要不可欠である。昨年度は,本研究に不可欠な高速パルスのレーザーとして,超短パルスレーザー用ポンプレーザーと超短パルス(〈50fs)Ti:サファイアレーザーを本科学研究費補助金によって導入し,現有のパルスレーザーシステムも活用して,フェムト秒パルスレーザー発生システムを整備することができた。 また,KEKの放射光源施設(フォトンファクトリー)のアンジュレータビームライン(BL-19)において光源加速器のRF信号に同期させて,レーザーパルスを発生させることにも成功した。レーザーと放射光を組み合わせた時間分解実験では(例えばポンプ-プローブ法)では両者のタイミングが最も重要である。昨年度はその実現のためにピエゾ素子を用いた自動同期回路とIQモジュレーターを利用した遅延回路を設計・開発を行った。さらに,Photon Factory蓄積リング内の電子を一定速度に保つRF空洞器の高周波発生源とレーザーの共振周波数との同期をコンピューター制御で自動に行わせることに成功した。
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