研究課題
本研究は、量子井戸・量子細線・量子ドットなどの半導体量子構造における電子状態とコヒーレントな表面弾性波 (SAW)フォノンとの相互作用を研究することにより、単一電子状態や多体電子相関を観測するための新しいスペクトロスコピー技術を確立するとともに、電子格子相互作用を人為的に制御することにより可干渉性の高い量子構造の創造を目指すものである。二次元量子ホール系と零次元量子ドット系という代表的な量子構造での研究を平行して進めることにより、SAWによる物性研究の有用性と独自性を示す計画である。初年度の19年度は、SAWデバイスの作製を中心に、SAW伝搬の基本特性やシミュレーション、時間依存現象の測定技術に関する研究を行った。1:周波数領域・時間領域測定によるSAW反射特性の測定。対向する交差指電極(IDT)試料において、一方のIDTからマイクロ波または電気パルス波形を入射し、他方のIDTで検出される信号を解析した。IDT構造自身によってSAWが反射される様子から、ブラッグ反射により30%程度の反射率が確認された。素子条件を最適化することにより共振器構造の設計を目指す。2:局所的ポテンシャルの時間依存性測定半導体ポイント接合を利用したポテンシャル相関測定を提案し原理実験を行った。ポイント接合のゲート電極およびトレイン電極に独立のパルス電圧により誘起されるポンピング電流について、2つのパルス電圧の遅延時間依存性を調べることにより、ポテンシャルの相関・時間依存性を測定することができることを実験的に示した。今後は、表面弾性波の時間依存ポテンシャル測定に応用する計画である。3:新しい表面弾性波構造の試作を行った。高周波化(>10GHz)を目指して、二次元電子ガスを用いた単層IDT構造を試作し、量子ホール素子への表面弾性波印加のための試料を試作した。
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AIP Conference Proceedings, W. Jantsch and F.S chaffler(Eds.), Melville/New York(2007). 893
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