研究課題/領域番号 |
19204033
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤澤 利正 東京工業大学, 極低温物性研究センター, 教授 (20212186)
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研究分担者 |
熊田 倫雄 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子固体物性研究グループ, 研究主任 (30393771)
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キーワード | 物性実験 / 半導体物性 / メゾスコピック系 / 量子ドット / 低温物性 |
研究概要 |
本研究は、半導体量子構造における電子状態と表面弾性波(SAW)フォノンとの相互作用を研究し、電子状態を観測するスペクトロスコピー技術の確立や、電子格子相互作用の人為的制御を目指すものである。SAWのみならず、量子ホール領域で試料端を伝搬するエッジマグネトプラズモン(EMP)や、印加した高周波電界など様々な時間依存ポテンシャルによる効果を視野に入れ、二次元量子ホール系と零次元量子ドット系という代表的な量子構造での研究を進めている。今年度は、時間依存ポテンシャル測定技術の考案と実証、量子ホール領域でのEMPパルスの伝搬特性、高周波電界を用いたNMR測定、SAWキャビティの試作などに関する成果を得た。 1:局所的時間依存ポテンシャル測定:素子のゲート電圧とソース電極に独立なパルス電圧を印加した場合に流れる電流を解析することにより、ポイント接合に実際に印加されている時間依存ポテンシャルを得ることに成功した。さらに、AFM探針に印加した高周波パルス電圧が作る局所ポテンシャルを観測することにも成功した。 2:EMPパルスの伝搬速度制御:1の手法を用いて、量子ホールエッジ状態をパルス的に伝搬するEMPのつくる時間依存ポテンシャルを測定した。ゲート電極に沿って形成されたEMPの群速度がゲート電圧に依存することを見いだし、EMPパルスに対する可変遅延制御素子として働くことを示した。 3:電界制御核磁気共鳴:スピンドメインの形成された占有率2/3の分数量子ホール状態に時間依存ポテンシャルを印加することにより核磁気共鳴をおこし、核スピン状態を変化できることを示した。これは、電子スピンの偏極したドメインを空間的に変調することによって、核スピンの感じる有効磁場(変動磁場)に起因する新しいNMR技術である。 4:その他:表面弾性波キャビティを試作し、キャビティ構造中に高周波信号を印加することにより、同構造内に作り込んだポイント接合の伝導特性が変調される様子を観測した。キャビティの特性との関連を調べる計画である。
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