研究概要 |
今年度は、LixZrNCl系において、キャリア数xを系統的に制御した試料を作製し、その低温における電子比熱および磁化率の測定を行った。その結果、超伝導相においてキャリア数を減少させると、x=0.05における超伝導-絶縁体転移点にむけて、電子比熱係数γは緩やかに減少する一方、超伝導ギャップ比2Δ/kTcが増大することが明らかになった。このことは、超伝導絶縁体転移点近傍で観測されたTcの増大がフェルミ準位での状態密度の上昇によるものではなく、ペアリング相互作用の増大によるものであることを示している。また、同時にスピン磁化率の増大も観測され、ペアリング相互作用が磁気的な揺らぎである可能性を示唆している。また、Lix(THF)yHfNCl系において、0.15<x<0.5の幅広いキャリア濃度においてTcはほぼ一定であり、層間距離を増大させると、Tcが約30%増大することを見出した。 ^<15>NをエンリッチしたLi_xZrNClのドープ量x=0の絶縁体、x=0.08の絶縁体-超伝導相境界近傍Tc=14Kの試料と,x=0.20のTc=11Kの試料について^<15>N-NMRを行った。Tc以下での^<15>N-NMRナイトシフトが減少を明らかにし、スピン1重項超伝導状態を示唆する結果を得た。また、超伝導試料(x=0.08,0.20)の緩和率測定からは、常伝導状態で相関の弱い金属状態であることを明らかにした。Tc以下では、BCS超伝導体特有の緩和率のコヒーレンス・ピークは観測されなかった。さらに超伝導状態の6Kで、低次元超伝導特有の磁束格子運動に関する緩和率の増大を見いだした。以上よりLi_xZrNClの超伝導は、従来の3次元BCS機構の超伝導とは異なり、新しいタイプの低次元超伝導体であると考えられる。層状超伝導体の関連物質として、Fe系超伝導体FeSeのNMR実験よりTc以下で緩和率がT^3に従うことを明らかとし、非BCS超伝導であることを明らかにした。また、SrFe_2As_2の高圧下電気抵抗実験より、圧力下で反強磁性相の消失とともに超伝導相が出現することを明らかにした。
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