研究課題
銅酸化物高温超伝導体の低エネルギー領域の特異な電荷応答を調べるという目的にそって、当初の計画通り、以下の研究を行った。(i)試料は、Zn置換したYBa_2Cu_3O_y(Y123)や(La,Sr)_2CuO_4(La214)、(Ba,K)BiO_3の単結晶を自作した。(ii)テラヘルツ波反射型時間領域分光システムについては、測定精度向上のための改良を加え、信頼性の高い光学スペクトルを液体ヘリウム温度までの温度可変で測定できるようになった。La214のc軸偏光スペクトルを測定したところ、ジョセフソンプラズマの系統的な組成・温度依存性が確認できた。前年度見つけたダブルジョセフソンに起因すると思われるピークは特定の試料でのみ観測され、結晶育成時に生じた予定外の構造の乱れが原因と結論した。面内偏光測定については、更なる改良が必要であることがわかった。(iii)銅酸化物超伝導体との比較のために、典型的なBCS超伝導体である(Ba,K)BiO_3について、フォノンのソフト化の組成依存性を非弾性X線散乱実験で調べた。その結果、理論計算で予測されている電子・格子相互作用の組成依存性と、観測されるフォノンのソフト化は、直接の相関がなく、むしろ金属・絶縁体転移に原因があることがわかった。類似のフォノンソフト化が観測されている銅酸化物超伝導体においても、その解釈の再検討が必要であると思われる。(iv)Zn置換YBCOについて、面間抵抗率測定を行ったところ、擬ギャップの兆候と思われる低温での抵抗の増大が、Zn置換によって抑制されることを見出した。一方、擬ギャップが消失してもなお、面間伝導はインコヒーレントであることがわかり、面間伝導機構のインコヒーレント性の起源は強い電子相関にあることが確認された。
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http://buna.phys.sci.osaka-u.ac.jp/activity_j.html