研究課題
中層大気においては、大気重力波、捕捉されたロスビー波、慣性不安定、対流圏界面付近の微細構造、トレーサーの層状・フィラメント状構造など、小さな空間スケール、および短い時間スケールを持った現象が重要な位置を占めている。これらの中小規模擾乱が中層大気の大規模構造、大循環や振動現象に対して果たす役割の全体像については、まだ、定量的には十分理解されているとはいえない。私達の研究グループ(KANTOプロジェクト)では、これらを明らかにするため、地表面から高度約80kmまでを含む、鉛直高解像度(300m)のT213L256中層大気GCMを開発した。このGCMは、極夜ジェットや夏半球の東風ジェットといった、中・高緯度の中層大気大循環を現実的にシミュレートした。また、熱帯では、成層圏界面付近の東西風半年周期振動や、下部成層圏の準2年周期振動に類似した東西風振動現象が自発的に生成された。そして、「成層圏界面の冬の亜熱帯領域に温度極大が見られる」という予想していなかった新たな知見が明らかとなった。分解能の荒い観測データにも注意深く見ると現れていることがわかったが、その存在はこれまでほとんど認識されていないものであった。本研究で用いる高解像度気候モデルの特長を生かした力学的考察が行なえる興味深いテーマであり、世界に先駆けてその成果を発表する必要がでてきたので、こちらを優先して解析を進めた。絶対角運動量保存則や残差循環方程式系を用いて、その温度構造が保たれるための力学的なメカニズムを提案した。これらの成果はJ.Geophys.Res.誌に投稿し、掲載された。第一論文はハイライト論文となった。
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J. Geophys. Res 113
ページ: D12110, doi:10.1029/2008JD010026
ページ: D17117, doi:10.1029/2008JD009786
第22回大気圏シンポジウム報告書 (7)