研究課題
石質隕石の主要な構成鉱物であるコンドリュール(mmサイズの球状の珪酸塩結晶)の結晶化過程を調べるため、ガスジェット浮遊法を用いて非接触でコンドリュールメルトの結晶化実験を世界に先駆けて行なった。結晶化する様子を高速度カメラで撮影し解析した。その結果、従来数時間程度かけて結晶化していたとされるコンドリュールが、実は数秒程度という極めて短い時間で結晶化し多様な結晶組織を作ったことが分かった。完全溶融したフォルステライトメルトは、数百℃から千℃程度の極端な過冷却状態で初めて結晶化するが、一端核形成すれば、その大過冷却(ハイパークーリング)ゆえに、0.1秒という極めて短時間に結晶化が終了する。一方、エンスタタイトメルトでは、どれほど過冷却しても結晶化はおこらずガラスになる。天然コンドリュールは結晶化しているので、実験と天然物の観察結果には大きな隔たりがあった。この問題を解決するために、宇宙空間に普遍的に存在するコスミックダストがエンスタタイトメルトに衝突するとして、エンスタタイトメルトと疑似コスミックダストとの衝突による不均質核形成実験を行った。その結果、エンスタタイトメルトもフォルステライトメルトと同様に、やはり数百℃の超過冷却状態が必要なことが分かった。これらの詳細な実験結果を理論的にも相補的に検証するために、フェーズフィールド法を用いたコンドリュールメルト結晶化の数理モデルにもとついたシミュレーションを行った。研究の独創的な点は、世界に先駆けて浮遊したメルトからの結晶化の"その場"観察実験を行い、コンドリュールの組織形成過程を調べるために、数値シミュレーションを併せて行って相補的に研究を進めたことである。これにより、コンドリュール形成の物理的なモデルが完成したことになり、原始太陽系での形成時間や温度などの条件が数値的にも明らかになった。
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