研究概要 |
本研究では水を含む高圧マントル鉱物の構造解明という目標に向かって、この一年間で大きく前進した。具体的な成果は以下の通りである。 (1)多核種・多次元NMR測定法の開発。本研究課題の一つ大きな特徴は多核種・多次元NMRの潜在能力を最大限に引き出すことにより、地球物質の構造への洞察を得ることである。この一年間、これまで活用してきた2次元1H NOESY、1H DQ MAS NMR、1H-29Si HETCOR NMR、1H-27A1 HETCOR NMR,1H-27A13QMAS/HETCOR NMRなどに加えて、新たに高分解能2次元1H CRAMPS-MAS NMR,1H-27A1(29Si)CRAMPS/HETCORNMRなどの測定に成功した。それによりは特にプロトンの分布について、他の手段から得難い情報を得ることができた。成果の一部はXue and Kanzaki(2007)J. Phys. Chem.で公表した。 (2)高圧含水鉱物の構造解明。研究課題の主要対象であるMgO-SiO_2-H_2O系の含水鉱物について、最も安定圧力の高いphase D及びsuperhydrous Bの構造を様々な1次元・2次元NMR測定法を応用することにより解明した。Phase Dについては、Si-Mgの配置の秩序性及び水素結合距離の分布を明らかにした。Superhydrous Bについては、特に2次元1H NMRの適用により、初めてその空間群をめぐる混乱を解明した。これらの成果はXue,et. al.(2008)Am. Mineral.で公表した。また、これまで取り組んできたA1_2O_3-SiO_2-H_2O系の高圧含水鉱物(phase egg,topaz-OH,topaz-OHII)のSi-A1.分布の秩序度などについても新たな知見を得た(Xue, et. al. in prep)。 (3)含水ケイ酸塩メルトの構造解明。多核種・多次元NMR測定法の開発と平行に、これまで進めてきたアルミノケイ酸塩メルトにおける水の溶解機構に関しても、新たな知見を得た。これらの成果は(2007)Solid-State NMR及びXue and Kanzaki(2008)Geochim.Cosmochim.Actaで公表した。
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