研究課題
プラズマにおける流れ構造の形成は、内部に形成される電場によるE×Bドリフトが本質的な役割を果たすと考えられてきた。実験室プラズマから電離層まで、すべてのプラズマには中性粒子が共存し、いわゆる弱電離プラズマ状態が実現されているが、中性粒子の存在はプラズマの運動に対して弱い散逸効果もたらすと考えられてきた。結果として、弱電離プラズマ中の構造形成においても、完全電離の場合と同じ、電場に駆動されるE×Bドリフトのみが形成機構として考慮されてきた。しかし、イオン-中性粒子間の電荷交換相互作用を考慮すると、セナ効果によって大きな運動量交換が可能となり、条件によっては電場よりも大きな効果をもたらすことが本研究によって明らかにされた。この場合、プラズマ中に形成される渦は電場によるE×Bドリフトとは反対方向に回転するという定性的に異なる特徴を示し(反E×B渦)、プラズマの流れ構造を考える上で中性粒子の流れ場を測定することが非常に重要であることを示している。平成21年度までに、反E×B渦中の中性粒子流れを計測するための狭帯域半導体レーザー誘起蛍光分光システムを開発した。これを用いた実験を行うことによって、反E×B渦に伴う中性粒子の流れを初めて計測し、渦の形成機構がイオン-中性粒子間の電荷交換相互作用であることを明らかにした。この結果は、電場以外の原因で流れ構造が形成されることを意味しており、弱電離プラズマにおける新たな普遍的構造形成機構の存在が明らかになった意味において重要である。さらに、中性粒子(物質)と電場(電荷)のどちらがプラズマの流れ構造形成を担うかについて、両者の存在比および温度比によって弱電離プラズマを分類し、より一般的な結論を得た。
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Review of Scientific Instruments
巻: 80 ページ: 053505-1-053505-4
Plasma and Fusion Research SERIES
巻: 8 ページ: 11-14
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