研究概要 |
レーザー誘起放電とパルスジェットを組み合わせて、プロトン付加水クラスター,H^+(H_2O)_n,をn=100まで生成させ、重連型四重極質量分析装置と差周波発生コヒーレント赤外光によりサイズ選別赤外解離分光測定を行った。水素結合及び自由OH伸縮振動領域の赤外スペクトルを観測し、その結果、水分子間の水素結合ネットワーク構造の段階的発展をかつて無い大きなサイズに至るまで追跡する事に成功した。自由OH伸縮振動数が中性水クラスターのそれとははっきりと異なることが見いだされ、振動数の配位数及びサイズ依存性から1個のプロトンが周辺100個の水分子の水素結合構造を変えることが分かった。水素結合OH伸縮振動領域のスペクトルはn=80付近から新たな吸収バンドが現れ、密度汎関数法計算によるモデルクラスター構造の解析から、これまで観測されたことのない4配位の水分子による吸収であることが確認された。これにより、帰属が極めて不明確であった液体の水におけるOH伸縮振動バンドの解析に大きな進展が期待できるようになった。
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