本研究では、ソフトランディング単離法を用いて、種々の低次元ネットワーク構造を有する有機金属ナノクラスターを非破壊的に単離・担持し、配向を含めた吸着構造が制御された有機金属ナノクラスターの光吸収特性ならびに発光特性の解明を目指している。平成19年度は、吸収・発光スペクトル計測のための大気下における光導波路分光システムの開発と感度評価と、光物性研究のためのソフトランディング実験の多様化の研究を推進した。 真空装置に導入する上での種々の基本的な評価・検討する目的で、大気下において光導波路分光システムを構築した。薄膜導波路に外部から光をカップリングする方法には、光のカップリング効率の良いプリズム法を採用し、入射白色光の導波路内伝搬後の出射光量の波長依存性をCCD分光器によって検出した。また、感度を向上させるために導波路を薄膜化による全反射回数の増大を進めた。波長特性では800m以上の長波長側と370nmより短波長側で、ピーク強度の10%以下になった。この要因は長波長側では光源の特性によって、短波長側は散乱光の影響のためであると結論した。また、短波長側の改善にはプリズムとのカップリングに油浸法を用いることが有効ではあったが、真空装置内への導入では真空システムとの整合性に課題があることがわかった。 一方、ソフトランディング実験では、蒸着基板の多様化を進め、カルボキシル基の導入による気相クラスターの捕捉とクラスター配向挙動の解明を行った。末端がアルキル基の単分子膜ではクラスターイオンが、アルキル分子鎖の秩序構造を融解状態にしながら自己組織化単分子膜内部に侵入し、再び秩序化によって捕捉される。ところが、自己組織化単分子膜の末端をカルボキシル基に置換すると、カルボキシル基間の水素結合ネットワークが形成されるので、ソフトランディングしてもクラスターは単分子膜内部に侵入せず、膜表面に物理吸着していることがわかった。この手法は、自己組織化単分子膜上のクラスターの深さ制御を可能とする成果である。
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