研究概要 |
本研究はこれまでの炭素-ホウ素結合形成に重きを置いたボロン酸合成法とは対照的に,「炭素-ホウ素結合を保ちながら行う」ボロン酸合成法を開発しようとするものである。本研究期間において,ホウ素のマスキングを利用した新しいホウ素化合物合成法を開発したので報告する。 (1)次世代マスキング基の開発 我々が既に開発している1,8-ジアミノナフタレン型保護基は,脱保護に酸性を要することから,官能基共存性や,一時的に生じる有機ボロン酸の不安定性等の点において,完全なものではなかった。今年度の研究において,窒素原子上にヒドロキシアルキル基を導入した1,8-ジアミノナフタレンを新たな保護基としてデザインし,用いたところ,上記課題を克服する優れたマスキング能力を示した。 (2)マスキングを施しかハロゲン化有機ボロン酸の合成法開拓 従来,マスキング基を施したビルディングブロックは,対応する有機ボロン酸と1,8-ジアミノナフタレンの縮合によって合成していた。より直接的かつ効率的なビルディングブロック合成法の提供を目的に,予めホウ素上に1,8-ジアミノナフタレン保護基を備えたヒドロボランによるC-B結合形成反応の開発を行った。同ヒドロボラン反応剤を用いた芳香環のC-Hボリル化とアルキンのヒドロホウ素化は,イリジウム触媒によって効率よく進行することを見出した。この反応を利用して,デンドリマーおよびオリゴ(フェニレン-ビニレン)の繰り返し合成を行った。
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