研究課題
平成19年度の本研究ではPd4Si3型の平面四核錯体の前駆体となる単核、二核錯体の構造と反応性について新たな成果をあげた。20年度は、これを大きく発展させてパラジウム四核錯対を合成、構造解析するとともに、そのヨウ化銅の付加体の生成について新たな事実を多数集積した。Pd4Si3型の平面四核錯体をX線結晶構造解析によって構造を明らかにし、ここで得た原子座標に基づいてDFT計算による電子配置の検討を行った。その結果、四核構造の安定化に寄与しているいくつかのMOの形状を明らかにした。特に1つの結合性軌道は、配位平面の上下に大きくひろがった形を有しており、平面状のπ電子共役系を形成していることが明らかになった。さらに、一つのPd-Pd結合へヨウ化銅が付加した錯体についてのDFT計算結果を比較したところ、ルイス酸性のヨウ化銅が電子飽和な平面共役系に付加している構造が明確になった。付加によって生成したPd4Si3Cu型の多核錯体についてはX線構造解析、NMRなどにより固体、溶液双方の構造を明らかにし、溶液中ではすみやかに銅が旋回運動をおこしていることを明らかにした。酸化能力を有する有機ジスルフィドを平面四核錯体と反応させたところ、S-S結合が開裂して錯体に付加し、さらに平面構造が配位子の転移によって大きく変化することをみいだした。この反応においては複数の生成物が得られたが、そのすべてをX線結晶構造解析や各種スペクトルにおいて構造決定した。ここでは、O価パラジウムに対するS-S結合の酸化的付加反応がおきたのち、平面構造内で転移反応がおこり、新構造をもつ四核錯体や二核錯体が生成したものと理解される。
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