研究概要 |
平成19,20年度の研究では、Pd4Si3型の平面四核錯体の合成とX線構造解析及びDFT計算によるキャラクタリゼーションに成功した。本年度は、配位原子をゲルマニウムとするPd4Ge3型四核錯体の合成とその反応挙動を明らかにする目的で各種の実験研究を行った。 ジゲルメン橋かけ配位子を有する二核パラジウム錯体と単核ジゲルミルパラジウム錯体との反応によって、Pd4Ge3型の平面四核錯体を得た。X線構造解析および各種NMR測定によって前年度までに合成したPd4Si3型錯体と等電子で構造類似の錯体であることが明らかになった。平面四核コアはケイ素、ゲルマニウムの共有結合半径の違いを反映してPd4Ge3型錯体の方が有意に大きいことがわかった。この錯体の各種分子との反応を行った。ジチオールとPd4Ge3型錯体とのヘキサンを分散媒とする不均一系の反応では、原料の錯体は定量的にパラジウム六核錯体へと変化した。生成物のX線構造解析反応によって、ジチオールの一方のS原子がパラジウムとゲルマニウムとに橋かけ結合して安定化し、パラジウムは三核の直線部分がジチオラート架橋配位子によって二量化しているとがわかった。同様な反応を溶解性の高い溶媒中で行うと、反応は短時間で完結するものの、多種類の単核、二核構造パラジウム錯体を生成した。チオールよりも反応性の低いプロトン性化合物であるアルコール、フェノールとPd4Ge3型錯体の反応をおこなった。その結果、フェノールの反応を加温下で行うとフェノールがPd-Pd結合に付加し、多核構造が変化して、四つのパラジウムが鎖状に連結したPd(1)_2Pd(0)_2型錯体が生成した。この反応は本質的に可逆であり、鎖状四核錯体を冷却すると元の錯体を再生する。新しい平面型の含ゲルマニウム多核錯体を合成し、その構造、反応性を明らかにした。
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