研究概要 |
ニトロゲナーゼによる窒素固定の反応は、十分に窒素がある条件でも常に水素発生を伴う。そのため、研究の初期にはニトロゲナーゼはヒドロゲナーゼの一種であると考えられていた。しかし、ニトロゲナーゼの触媒反応における水素発生の理由については、現在でも依然として明らかになっていない。本研究ではニトロゲナーゼの触媒反応における水素発生をヒドロゲナーゼの行う水素分子の活性化に当てはめた。本年度は、水中・常温・常圧で水溶性ルテニウムアクア錯体と水素分子を反応させ、水素分子をヘテロリティックに活性化し、架橋ヒドリド配位子を持つ水溶性ルテニウムヒドリド錯体の合成に成功した(Science,2007,316,585-587)。さらに、架橋ヒドリド配位子を持つ水溶性ルテニウムヒドリド錯体を触媒とする「水中でpHに依存したカルボニル化合物の水素化と水素/重水同位体交換反応」に成功した(Proc.Natl.Acad.Sci.,USAに平成20年3月8日投稿)。本研究成果は、今後の水素活性化の基礎研究の発展に寄与するとともに、次期エネルギー源としての水素の研究開発につながると期待される。また、本研究成果は、平成19年4月25日にプレスリリースされ、Science誌のPerspectiveで紹介、C&EN NEWS(ACS)で紹介、Chemistry World(RSC)で紹介された。平成19年4月27日、西日本新聞、日刊工業新聞に掲載された。
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