顕微鏡下においてトリエチルアミンやブタノール水溶液に赤外光を照射することにより光誘起相分離を引き起こし、これによりピコリットルレベルの単一微小油滴を形成できること、また溶液中に溶質が共存する場合には、生成油滴に効率良く抽出されることを報告してきた。本系を更に発展させるため、混合物の電気泳動分離を組み合わせた新規システムの検討を行った。その結果、電気泳動分離した成分を光誘起生成油滴に抽出することにより、これまでより高感度に分離成分を検出可能であることを明らかにした。また、蛍光消光剤となるトリエチルアミンやアルコールであるブタノールは必ずしも新規計測法に適さない点もある。そこで、光誘起単一油滴形成現象をプロパンアミド系溶媒に展開した。一般的にプロパンアミド系溶媒は比重が小さく、レーザー捕捉に適さないが、最適条件下においては他の溶媒系と同様に光誘起単一油滴形成が可能であり、かつ、溶質の抽出を油滴のレーザー捕捉・顕微蛍光法により追跡可能であることを明らかにした。 一方、ピコリットル液滴の対象として大気中の微小水滴であるエアロゾルに着目して研究を行った。倒立型顕微鏡に設置した特殊チャンバー中にネブライザーにより発生させたエアロゾルを導入することにより、大気中で単一水滴をレーザー捕捉可能であること、また、これをin situでラマン計測や蛍光計測が可能であることを示した。一例として、SOxガスが水滴中に溶解する過程をリアルタイムで追跡可能となり、大気中における酸性雨のモデル実験となることを明らかにした。
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