研究概要 |
1. m-フルオロアニリニウム、m-アミノアニリニウムとジベンゾ[18]crown-6とを組み合わせることで得た[Ni(dmit)_2]-結晶について強誘電性に関する物性評価を進めた。誘電率の温度依存性、P-E曲線、NMR、X線構造解析等から、前者については350K付近に転移点を持つ強誘電体であることを明らかにした。後者についても同様に評価を行った。これらの成果をまとめた結果は、Nature Materialに掲載が決定している。 2. [Ni(dmit)_2]-を部分酸化することで、電気伝導性結晶の中にローター構造を導入した。アニリニウムおよび置換アニリニウムとクラウンエーテルの組み合わせから、種々のローター構造を形成させることが出来た。[Ni(dmit)_2]は得られた結晶すべてで1/3価であり、3量体または6量体を形成していたため、半導体的な挙動を示した。アニリニウムの場合は、結晶内での回転が示唆された。また、超分子ローター構造の運動に起因する、伝導性の変化を示唆するデータが得られたので、引き続き詳細を検討している。 3. これまで検討してきたアダマンタン誘導体に加えて、シクロヘキサン誘導体の検討を開始した。シクロヘキサンは容易に誘導体化が可能であり、キラルな回転子を用いることも可能になる。また、回転だけでなく、立体反転を利用した強誘電性の発現も視野に入れることが出来る。予備実験として、1, 4-cisおよびtrans誘導体を用いて、[18]crown-6等と組み合わせることにより、[Ni(dmit)_2]結晶に超分子構造を導入することが出来た. 引き続き、キラル結晶等への展開を図っている。
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