研究課題
基盤研究(A)
生体の中には多くの分子モーターが存在し、アクチン-ミオシンモーター(筋肉)、ダイニンやキネシンモーターなどのリニアモーター、ATP合成酵素や鞭毛モーターのように一方向回転を行うモーターなどがある。一方、合成分子モーターも最近報告されるようになったが、精緻な生体分子モーターを完全に模倣するには至っておらず、現時点ではシスートランス異性化や酸化還元反応を利用した一方向回転の実現に留まっている。これらの合成人工分子モーターと生体中の分子モーターとの決定的な違いは、後者は化学エネルギーを巧みに利用して一方向へ運動する過程で、化学エネルギー間、あるいは化学エネルギーと力学エネルギーとの間で、高効率のエネルギー変換を行っていることである。しかも、これらのモーターは0.1・mあるいはそれ以下の大きさであり、サイズが小さいが為に、『確率共鳴現象(stochasticresonance)』により熱揺動を利用して高効率エネルギー変換を実現している可能性が高い。そこで本研究では、分子の一方向回転とそれに基づく高効率エネルギー変換系の構築に向けて、単結晶内において分子回転が可能な系を構築し、その機能開拓および回転の機序に関する研究を行うこととした。具体的な研究項目は以下の通りである。(1)導電性・磁性を示す[Ni(dmit)_2]などの単結晶内に種々の超分子ローター構造を構築する。結晶内での分子回転が可能になるための、一般的な分子設計指針を得る。(2)分子回転と磁性・電気伝導性との結合を行い、その相互作用の機序を明らかにするとともに、回転エネルギーを電気エネルギー等に変換するための結晶設計指針を明らかにする。(3)分子回転可能な系において、回転ポテンシャルの形状を決定するとともに、ノコギリ歯型ポテンシャルを導入する。(4)外部からのバイアスを印加し回転ポテンシャルを"揺らす"仕組みを作り、一方向回転の必要条件を整えブラウンラチェット機構により熱揺動にアシストされた一方向回転を目指す。以上の研究により、固相分子モーターのエネルギー変換材料としての可能性を示す。
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