二重トンネル接合を介したクーロンステアケースの発見以来、微細Auナノ粒子の単電子トンネル素子(単電子トランジスタ、フローティングゲートメモリ)への応用が注目されるようになった。すなわち、静電容量の小さい粒径2nm程度のAuナノ粒子を電子の量子化輸送(1〜数個単位で輸送)物質として用いることで、室温でのクーロンプロッケード現象が実現できるため、その二次元超格子は、単電子トンネル効果を利用した素子へと展開できる。本年度はまず、超格子の粒子間距離短縮を目的とした低耐熱性低分子量チオール保護Auナノ粒子の室温粒径制御法の開発について検討を行った。2nm程度のアルカンチオール保護Auナノ粒子トルエン溶液に、酸性度の異なるプロトン酸とソフト性の異なるハロゲン化物イオンを添加することにより、配位子の脱着および粒子の融合が促進され、2〜7nmの範囲でAuナノ粒子の精密粒径制御に成功した。次に、配位子殻厚さの劇的な減少および伝導パスへのπ電子雲垂直挿入を実現するため、3種類のポルフィリン誘導体を設計・合成・アトロブ同位体の単離後、ポルフィリン誘導体保護Auナノ粒子を合成した。ポルフィリン誘導体保護Auナノ粒子のUV-visスペクトルから、ポルフィリン環のSoret帯のモル吸光係数の減少は、Auナノ粒子の粒径の減少に伴い小さくなり、ポルフィリンπ軌道がAuのバンド構造と電子的相互作用することが示唆された。Auナノ粒子表面に平面配位したポルフィリンは、量子抵抗以下のトンネル抵抗を有することがSTS測定より分かった。
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