機能性分子の自己組織化を用いたボトムアップ型のアプローチは、秩序構造を有する高機能性ソフトマテリアルの構築に有用である。特に、動的な秩序構造を有する液晶をイオン・電子・物質を輸送する機能材料として応用することは極めて有望である。本研究では、液晶のナノ相分離構造を活用した高性能高機能イオン輸送材料を構築することを目的とした。 一次元にイオンを伝導する液晶材料の構築を目指し、プロピレンカーボネート基を有する扇状分子やオリゴエーテル部位を持つ大環状分子を設計合成し、これらの分子をカラムナー液晶相に組織化することに成功した。液晶性カーボネート分子とリチウム塩との複合体においては、交流電場印加により、カラム構造がマクロに一軸配向することを見出し、未配向試料に比べてイオン伝導度を約4倍上昇させることができた。 さらに、三次元にイオンを伝導する双連続キュービック液晶性アンモニウム塩に関して、そのイオン伝導メカニズムを核磁気共鳴スペクトル分光によるイオン拡散定数の測定により明らかにした。液晶相においては、アニオン伝導が支配的であるのに対し、等方性液体相においては、アニオンとカチオンが対を形成して伝導することがわかった。 イオンおよび電子の両方を伝導する液晶材料を開発した。イミダゾリウム塩構造を有するオリゴチオフェン分子は、イオン層および電子伝導層が交互に積層したナノ相分離構造を形成し、電場印加による電気二重層形成とホール注入により、電解液がなくてもエレクトロクロミズム特性を示すことを見出した。
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