研究課題/領域番号 |
19205021
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浦野 泰照 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 准教授 (20292956)
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研究分担者 |
奥野 浩行 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (80272417)
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キーワード | 分子イメージング / 蛍光プローブ / がん / 光線力学療法 / 光誘起電子移動 / エタノール注入療法 / ロドール / リソソーム |
研究概要 |
本年度はグリコシダーゼ活性を鋭敏に検出可能な蛍光プローブを開発した。がんのPET検査ですでに臨床で用いられているFDGは、がんの高い増殖性に起因する糖代謝酵素の亢進を利用したプローブであり、光イメージングではこの要素に加え、代謝されることで劇的に蛍光強度が上昇するプローブを作成可能と考えた。そこで糖鎖部位が付いている時は、分子内で閉環構造を取り、これが糖加水分解酵素によって切断されることで元の蛍光団を再生する新しい発想に基づき、ロドールを分子骨格とする新たな蛍光プローブを開発した。本プローブは、糖部位が切断されることでほぼ100倍の蛍光増大が起こること、生成物の細胞からの漏出が比較的が遅いことなど、in vivoのイメージングに適した性質を有することが明らかとなった。そこで本プローブを腹腔播種がんモデルマウスに適用したところ、1時間以内の短い時間でがん部位を蛍光検出できることが明らかとなり、播種がんに対する蛍光プローブとして優れた性質を有することが明らかとなった。 次に昨年開発することに成功した、酸性pH感受性蛍光プローブ-がん抗体複合体による、がん治療の可視化を試みた。検出原理であるリソソームの酸性pHは細胞が生きている時のみ維持される性質であり、がん治療が奏功しがん細胞が死滅することで、これは中性に戻ると考えられる。開発した酸性pH感受性プローブの蛍光ON/OFFは可逆的であるため、本プローブによって可視化されたがん細胞が死滅すると、再び蛍光が無くなるのではないかと予想された。そこで培養細胞系及びin vivoマウスモデル系でこれを検証したところ、アルコール注入療法による治療効果をリアルタイムに観測できることが明らかとなった。本結果は、開発したプローブは微小がんの発見にとどまらず、そのがんに対する治療効果を見ながら治療の継続を判断できると行った、高次かつ実用的な機能を持つことが明らかとなった。
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