研究概要 |
南極地域の湖沼を中心に262個の試料を収集し、これらから好冷菌、貧栄養菌、好塩菌、嫌気性菌、光合成菌、共生菌を中心に1000種類以上の微生物を分離した。得られた微生物の新規性は16S rRNAの塩基配列の相同性に基づいて判断し、既知の微生物との相同性が97%以下であれば新種に分類される可能性が高いと考えた。さらにこれらの候補株についてはさらに系統樹を作製して、遺伝的進化関係を明らかにすると共に、電子顕微鏡などによる形態観察、基質・酵素活性・抗生物質感受性(耐性)など生理学的検討を行った。その結果、2種の菌株が新科であることが示唆された。(1)120-1株は16S rRNAの塩基配列相同性が93%であり、直径0.5〜1.0μm程度の球菌であり、SEM観察では菌体の周囲に突起状構造が認められた。本菌株(赤色コロニー形成)については全ゲノム配列を決定した。総塩基数は5,663,506bp、遺伝子数は5,000〜6,000個程度であることが明らかになった。(2)また262-8株は寒天培地上で微小の白色コロニーを形成する貧栄養性菌であった。さらに細胞は通常の分裂形式を示さず、枝豆状の連鎖菌である。共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果、それぞれの細胞の中には核酸が含まれており、細胞分裂が正常に行われ難い微生物であると考えられる。これら以外にも、白色岩の間隙から11種類の共生微生物群を分離した。この中には炭酸固定菌や窒素固定菌も含まれていた。更に全体として新属、新種と思われる微生物を多数発見することができた。
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