研究概要 |
LiFePO_4はリチウムイオン二次電池の電極材料として実用化が現在急速に進められている。このような電極材料における充放電反応機構の解明は、特性の改善やデバイスの最適化のために重要であり、さらに優れる材料の設計、創成のためにも不可欠である。この充放電機構を議論する上で最重要とも言えるバルク中でのリチウムイオン伝導機構に関して、Li欠陥を大量に導入し、高温に保った状態で中性子回折測定を行い、最大エントロピー法を併用することでLi拡散経路の直接可視化を試みた。その結果として、一次元拡散経路がLiの核密度分布として明瞭に確認された。この成果はリチウムイオン電池の電極材料としては初めてものであり、J-PARCにおいてハイスループットの中性子回折計が稼働した暁には、本系に適用した手法が、広くリチウム伝導機構解明に寄与すると期待される。 LiFePO_4の充放電機構や結晶化学の知見を生かした新規材料群として、ホウ酸塩、ケイ酸塩に着目し、その中でも大容量が期待される組成についてピックアップし、合成、電気化学特性、充放電機構の検討を行ってきた。ケイ酸塩については組成がLi_2MSiO_4(M=Fe,Mn,Co)の系について検討を行った。その結果、合成条件の最適化による多形制御、Mn存在下での非晶質化と容量劣化の相関などについて明らかにした。ホウ酸塩についは、LiFeBO_3という組成に着目し、粒径を押さえ、カーボンコンポジットとした試料の合成を行い、充放電容量が最低でも理論容量の70%を超える電極の作製に成功し、また、この材料が空気中に曝露されることによる化学的変化について重要な知見を得た。
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