研究概要 |
リチウムイオン電池の正極材料として、低コスト、低環境負荷で、安定性に優れているLi_xFePO_4(0<x<1)は、パワーツール用電源として既に実用化され、ハイブリッド自動車用途への試験検討も本格化している。本研究では、Li_xFePO_4が電子絶縁性物質であるにも関わらず、微粒子化を100nm程度以下まで促進することで優れた負荷特性が得られる原因を明らかにすべく、粒子サイズに依存する充放電機構の変化に注目した。 LiFePO_4の粒子サイズは、250nm-40nmの範囲で制御した。電気化学測定からは、充放電曲線における両端リチウム組成(0<x<α,1-β<x<1)付近で、一定電位から逸脱した領域の微粒子化による拡大が観測された。さらに、X線回折測定による構造解析では、Li_αFePO_4/Li_1-_βFePO_4への二相分離状態である中間組成(α<x<1-β)における各相の格子定数が、微粒子化に伴い両端組成(x=0,1)の値から大きく逸脱した。また、x=0.9においては、40nmの微粒子の場合のみ固溶相として単離された。高温X線回折測定とDSC測定の結果からは、低温での二相分離状態から高温での固溶状態への相転移挙動において、微粒子化により転移温度の低下と転移エンタルピーの減少が確認された。この際の転移エンタルピーの値は配置エントロピー変化、転移温度、転移率の各因子を考慮した熱力学モデルにより定量的に裏付けられた。 さらに、LiFePO_4の優れた特徴を維持しつつ、さらに資源面や容量面での優位性を追求すべく、XIII族、XIV属元素を中心元素にもつオキソ酸塩であるLi_2(Mn_xFe_<1-x>)SiO_4とLi(Mn_xFe_<1-x>)BO_3に注目し、結晶構造決定、多形相関の整理、電極特性と問題点の抽出、および充放電反応機構の実験・理論両面からの解明を行った。
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