Li_xFePO_4の二相平衡電位を通過する電位ステップに対する電流応答は、典型的な核生成・成長過程を示し、Avramiモデルの適用可能性が示された。各粒径の試料に対してAvrami plotを作製したところ、核生成モデルを表わすAvrami指数はいずれも約1となり、これまでに報告されているLiFePO_4の相境界のa軸方向への一次元移動を支持する結果となった。また、Arrhenius plotへ展開することにより、相境界移動における活性化エネルギーを算出したところ、微粒子化に伴い活性化エネルギーは低減した。導出した活性化エネルギーの低下と、微粒子化による格子ミスマッチの現象は対応した変化を示し、粒子サイズに依存する相境界移動現象の変化を定量的に確認することができた。これは、二相界面整合性の向上による、相境界移動障壁の低減に対応している可能性がある。 また、Li_xFePO_4(x=0.6)は、高温において混合原子価状態となることが知られている。これを急冷処理することにより、高温での固溶状態を室温で準安定に実現することができることが報告されている。また、この準安定固溶相Li_<0.6>FePO_4は暗緑色に呈色し、電子状態が変化していることが示唆されている。この呈色現象に着目し、室温での熱力学的安定相である相分離状態のLi_xFePO_4に対する拡散反射スペクトルにより、呈色現象の粒子サイズ依存性を追跡したところ、微粒子化により緑色域に極小値を有する可視光領域の吸収がより顕著となり、微粒子化に伴う固溶領域の拡大を支持する結果となった。この呈色現象は、Fe^<2+>-Fe<3+>の固溶に伴うバンドギャップ内の準位形成とこれに関わる励起現象によると考えられることから、呈色現象が粒子サイズに依存する相図の変化への新たな指標となる可能性が示唆された。
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