研究概要 |
たんぱく質中の主要構成元素の硫黄(S)および核酸中の燐(P)の特性X線は,波長0.5nmから0.6nmに存在する。これらの元素同定にはそれらの波長近辺のX線を利用することが最も有効であり,本年度は当該波長のX線用ミラーとX線源の開発を行った。 (1)波長0.5鷺mX線用ウォルターミラーの製作 X線用ウォルターミラーは(a)母材(タングステンカーバイド)の研削・研磨,(b)真空成型レプリカ(パイレックスガラス),(c)Ptの内面蒸着,によって作製した。Pt蒸着は短波長のX線を効率よく反射させるために行った。パイプ状(内径10m皿前後)のミラー内面への蒸着はタングステンヘヤピンフィラメントに白金細線を巻き付けることによって実現した。蒸着面の平均粗さ約1.3nmが達成され,斜入射角7mradで0.5nmX線に対して反射可能なコーティングができた。 (2)短波長(0.5nm)パルスX線の生成 レーザープラズマX線の短波長化は,パルス幅100ピコ秒Nd-YAGレーザーによって実現した。板状ターゲットにレーザーを集光照射し,透過回折格子(5000l/mm)によって分光した。モリブデンでは0.45nm近辺,ニオビウムでは0.5nm近辺,ジルコニウムでは0.55nm近辺のプラズマX線が得られた。これらの波長群はS吸収端(0.50nm),P吸収端(0.58nm)に近く,元素の同定に有用であることが示された。 (3)ホトンカウンテイング法の試み 2次元CCDカメラの各ピクセル毎にエネルギー分解能を持たせた画像を得るために,ホトンカウンテイングのアルゴリズムを開発した。鉄とニッケルを含む線状物体からの蛍光X線をウオルターミラーで結像し,それぞれの元素が識別できる画像を得た。
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