生体試料中の微細構造の特定を目的として、3次元元素マッピング法の開発および細胞中の核酸同定法の開発を行った。前者では蛍光X線、後者では蛍光と軟X線を結像に用いた。 (1)ホトンカウンテイング法による3次元元素マッピング 前年度に開発した2次元CCDカメラホトンカウンテイングによるエネルギー分解画像を3次元元素マッピングに応用した。光学系には倍率10倍のウオルターミラーを利用し、波長0.1nmのX線まで結像可能な蛍光X線顕微鏡を構築した。実験では鉄とニッケルを含む線状物体の蛍光X線像を撮影し、それぞれの元素が識別できる3次元画像を得た。測定の撮影条件は0.1秒1コマで1000枚分の重ね合わせ画像を1投影像とし、50投影像から3次元再構成像を作成した。 (2)蛍光・軟X線共軸顕微鏡の製作と核酸位置の同定 特定の蛍光物質を細胞内に導入すると特定物質部位が励起光によって発光する。この関係はたんぱく質や核酸の分布を知るには有効な手段である。軟X線顕微鏡の高分解能力と蛍光顕微鏡の特定物質識別能を併せ持つ共軸顕微鏡光学系を構築し、その性能を評価した。本研究で用いる斜入射X線光学系は、蛍光に対しても同一の照明光学系・試料位置・対物光学系が利用できる。測定対象の核酸位置からの発光を促すために蛍光物質としてDAPIを用いた。試料として鶏の赤血球および鮭の精巣から抽出したDNAを観察した。光学系として透過型と落射(反射)型を採用した結果、透過型に比べ落射型の方が感度が高く、蛍光の観察が容易に行えた。
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