研究概要 |
本研究では,自己相関ロックインサーモグラフィによる疲労き裂の遠隔・非破壊・非接触計測手法と,可視デジタル画像相関による変位ひずみ分布計測をハイブリッド化した,新しい疲労き裂遠隔定量非破壊評価法および実働荷重下での破壊力学評価手法に基づく,経年鋼構造物の構造健全性評価システムを開発することを目的としている.初年度である平成19年度は,自己相関ロックインサーモグラフィおよびデジタル画像相関法によるハイブリッド計測システムの構築を中心的に行うとともに,その適用性を実験室レベルでの疲労試験および現場鋼橋梁の疲労き裂検出実験により確認した.(1)デジタル画像相関による変位計測に基づく赤外線計測の位置補正を高度化させるとともに,熱拡散による誤差軽減手法を開発した.(2)可視高速カメラと赤外線カメラの画像を時間的・空間的に完全一致させた計測システムを開発した.(3)実験室レベルの鋼構造試験体を対象とした疲労き裂検出実験を行った.その結果,開発したシステムにより,道路橋鋼床版で最も検出が難しい形態の疲労き裂の検出が可能であることが明らかになった.(4)供用下にある道路橋鋼床版の疲労き裂検出に関する現場実験を行い,計測システムの問題点の抽出を行った.その結果,疲労き裂の進展が問題となるような荷重条件にある橋梁に対しては,確実に疲労き裂の検出を行うことが可能であった.さらに,本手法によれば,構造物の供用時の実働荷重による応力分布をその場計測できることも証明され,次年度以降の研究計画である,実働応力分布計測に基づく破壊力学パラメータの直接評価法の開発に関する良好な手掛りを得た.
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