| 研究概要 |
本研究では,自己相関ロックインサーモグラフィによる疲労き裂の遠隔・非破壊・非接触計測手法と,可視デジタル画像相関による変位ひずみ分布計測をハイブリッド化した,新しい疲労き裂遠隔定量非破壊評価法および実働荷重下での破壊力学評価手法に基づく,経年鋼構造物の構造健全性評価システムを開発することを目的としている.平成20年度は,自己相関ロックインサーモグラフィによるき裂測定の高精度化に関する種々の検討を行うとともに,計測システムの適用性を実験室レベルでの様々な疲労試験および供用下の実鋼橋梁の疲労き裂検出実験により実証した.得られた成果を以下に示す.
(1)2Dパラボラフィッティングによる画像相関法の開発により,計測視野の位置補正を高速高精度化し,き裂同定精度を向上させた.(2)画像超解像技術を開発し,可視および赤外線計測における測定画像のサブピクセルレベルの高解像度化を行い,き裂同定精度を向上させた.(3)実験室レベルの鋼構造試験体を対象とした疲労き裂検出実験を行った.その結果,開発したシステムにより,既存の検査法では困難であったデッキ貫通型疲労き裂の遠隔計測が可能であることを実証した.(4)供用下の道路橋鋼床版の疲労き裂検出に関する現場実験を行い,自己相関ロックインサーモグラフィにより,遠隔から疲労き裂検出が可能であることを実証した.(5)供用時の実働荷重による応力分布をその場計測した結果をもとに,応力拡大係数を評価した.実働応力分布計測に基づく破壊力学パラメータの直接評価を可能としたことは,経年鋼構造物の安全性確保ならびに維持管理への貢献が大きい.
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