研究概要 |
当初の研究計画に沿って,三次元ナノ構造レゾネータの設計,製作,及び機械特性測定に関する研究を進めた。 (1)ナノレゾネータ共振特性の高周波数化を目的に,GaAsを用いた機械レゾネータを製作し,その共振特性を測定した。長さ3〜10ミクロン,幅400nm,振動方向厚さ200nmの梁構造レゾネータについて,ローレンツ型関数による共振点フィッティング法により,共振周波数及びQ値を評価した。その結果,梁長さ3ミクロンのレゾネータにおいて室温における共振周波数39.1MHz,Q値400を得た。 (2)レゾネータ振動特性の大幅か性能向上を狙って,引張応力内在型レゾネータの研究を進めた。MBEによって梁部をGaAs/In0.1Al0.9Asヘテロ構造で構成して格子常数に違いにより引っ張り歪を内在させ,その振動特性を内在歪なしの場合と比較した。共振周波数については2〜3倍の高周波数化(内部ひずみを0.4%とした場合の理論値と一致),Q値に関しては,14,000という高い値(約1桁の改善に相当)を得た。 (3)また,レゾネータの形状,構造が振動特性に及ぼす影響を評価するため,ピエゾ抵抗効果を有するSiカンチレバーの構造・形状を変化させて共振特性を測定した。カンチレバーの先端幅を根元幅の1/30となる様な先細り形状にFIBで変形加工し,その振動特性を測定して共振周波数を3倍程度向上させることが出来た。これは,材料や寸法に依存せず構造の変形(設計上の構造,形状の工夫)によりレゾネータの共振周波数を向上できることを示している。 (4)さらに,FIB-CVDにより作製したカーボンナノピラー(直径約100nm,長さ数ミクロン)について,電子ビームによりその機械振動特性を測定するとともに,コア-シェルモデルとレイリー・リッツ法によるナノピラーの動特性解析からカーボンの物性(密度,ヤング率)を評価することにより,その高さ方向の物性変化と成長速度との関係を定量的に明らかにした。 以上の実験結果を基に,今後は,共振点の更なる高周波数化,Q値性能の大幅改善を目指し,レゾネータ構造に内在する摩擦や表面におけるエネルギー散逸などの性能支配要因の解明を進めるとともに,ナノレゾネータのセンシングデバイス応用の研究に着手する。
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