研究概要 |
ナノメカニカル構造の創製と機能化の研究計画に沿って, 三次元ナノメカニカル構造の設計・作製, 機械的振動特性測定, 物性解明に関する研究を進めた. (1)前年度に引き続きFIB-CVDで作製したカーボンナノピラーを対象にナノ構造の振動特性および物性評価の研究を進めた. ナノ構造にEBを照射し, ナノ構造の振動で変調された二次電子信号を周波数解析する振動特性測定法を確立し, 測定可能振動周波数8MHz, 振動振幅検出分解能0.3nmを達成した. また, SEM像解析によって振動振幅を推定し, これからカーボンナノ構造ピラーの密度, ヤング率の推定を可能とした. (2)微小振動測定技術として, AFMを用いて測定対象ナノ構造を加振しながら同時に振動振幅を検出できる測定法を考案し, メンブレン振動子を使ってその高い測定性能を検証した. この測定法によれば, 極めて簡易なセットアップで振動方向・面方向ともにナノメータオーダの測定分解能をもって変位検出できることから, 共振モード(プロファイル)の直接測定も可能となる. (3)前年度までに実現した引張応力内在によるレゾネ一夕の共振特性(共振周波数とQ値)の大幅向上について, 今年度は更に100,000を超える高いQ値を得た. そこで, 引っ張り歪によるQ値改善の原因解明の実験を進め, 熱ダンピング起因のエネルギー散逸との関係が明らかになりつつある. ただ, 明確な結論の実証までにはさらなる実験検討が必要である. (4)また, レゾネ一夕の表面状態, および表面物性が共振特性に及ぼす影響について研究を進めた. プラズマ処理によって表面状態を変化させてそれらの共振特性を測定することによって, 表面の親水性・疎水性がQ値の支配要因の一つである(疎水性にするとQ値は向上)ことを明らかにした. (5)ナノメカニカル構造作製技術の研究については, FIB-CVD法を中心に療討を進め, シミュレーションによる堆積カーボン物性値の推定法, 堆積過程のモデル化による構造創製プロセスの解明, などの研究を進めた. (6)ナノ構造の機能化に関する研究の一つとして, メタマテリアル(負の屈折率を持つ人工物質)の創製を狙いに, SiO2膜中の金ペアロッド群の製作法について研究を進めた. 以上の研究成果を基に, 今後は, 共振周波数・Q値性能の更なる大幅改善方法の確立, そのための内部摩擦や表面エネルギー散逸などの性能支配要因の解明, およびこれらを基にしたナノレゾネ一夕のセンシングデバイス応用の研究を進める.
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