研究概要 |
プラスチックフィルムや紙などの連続柔軟媒体はウェブと総称され,新聞などの印刷物や写真,磁気テープなどの情報記憶媒体として,また液晶フィルムなどのディスプレイ用素材として極めて有用である.ウェブを搬送し,途中処理工程を経て最終的に巻き取る技術は"ウェブハンドリング技術"と呼ばれ,広範囲の産業分野において導入されている重要基盤技術である.とりわけ昨今における機械の高効率化,高性能化のニーズの中で,製品精度を損なうことなくウェブを安定して走行させ,かつ適切な処理を行うことがキーテクノロジーの一つとなってきている.平成21年度は,フィルム巻取り後の継時変化や温度変化がしわや巻きずれなどのディフェクトに及ぼす影響について検討した.まずフィルムの粘弾性や熱応力を考慮した理論解析モデルを構築し,広範囲の条件下における実験によりその有効性を検証した.その際,2種類のフィルムに対して巻取りロールの半径方向および接線方向の線膨張係数を新たに測定し,理論計算に取り入れた.理論と実験を比較した結果両者は良く一致し,フィルムの違いによる特性の違いやそのメカニズムの解明など有用な知見が得られた.一方,フィルム搬送時におけるしわやスリップの防止についても実施した.近年,高機能フィルムは薄膜化が益々顕著になっているが,これに伴い搬送時におけるしわやスリップの発生が極めて深刻な問題となっている.このような問題に対し,ロールの軸方向に緩やかなカーブをつけたコンケイブローラの表面に更にマイクログルーブを施してしわとスリップ防止に取り組んだところ極めて良好な結果が得られた.
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