| 研究概要 |
地球温暖化予測の精度を向上させるうえで,気液界面を通しての物質移動機構を解明することは非常に重要である.本研究では,降雨のみが単独で存在する場合と,降雨と風が共存する場合の2つの場合に対して,熱および物質の輸送に関する室内実験を行うことにより,降雨が気液界面下の乱流構造および気液界面を通してのスカラ輸送に及ぼす影響と,降雨とウィンドシアーの相乗効果により気液両相の乱流構造とスカラ輸送機構がどのように変化するかを明らかにすることを目的としている.
今年度は,昨年度に行った単一液滴の落下衝突実験より得られた知見(1.液滴の衝突を伴う気液界面を通しての物質移動は液滴の衝突によってつくられる表面更新渦によって促進される,2.その発生周波数は液滴の運動量と良好な相関関係にある)が,実験では再現不可能な液滴径が2mm以下という小さな液滴の衝突現象に対しても成り立つかどうかを,レベルセット法を用いた3次元直接数値計算法を用いて検討した.その結果,液滴径が1.2mm〜2.2mmという小さな液滴の衝突現象に対しても,衝突液滴の運動量と生成される渦輪の平均強度の間には良好な相関関係が成り立つことを明らかにした.
また,昨年度に風波乱流水槽上部に設置した降雨発生装置を用いて,雨が降り,風が吹く状態における風波気液界面を通しての二酸化炭素放散量を測定した.その結果,雨が降る場合の物質移動係数は,雨が降らない場合の物質移動係数よりも概ね増大することを明らかにした.これは,風波気液界面を通しての物質移動は降雨により促進されることを示唆している.
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