研究概要 |
本研究の目的は,脳・神経・筋肉の信号源を用いて人と機械の相互通信や意図認識を実現することであり,特にこれらの技術を,四肢の運動機能代替や機能回復に応用することを試みている。今年度の研究成果は,情報処理・制御技術の開発と随意運動系への適用,また制御系の妥当性の評価のための脳機能解析に大別され,詳細を以下に示す。 1.人・機械相互適応モデル構築のための筋活動状態のシナジー解析人・機械相互適応モデル構築のための基礎研究として,重量物の持ち上げ動作時の全身の筋活動状態のシナジー解析を行い,熟練者と初心者の筋活動の差異から「人がもつ巧みさ」の定量的評価を試みた。 2.筋電義手使用時のfMRIによる脳機能解析人の機械への適応過程を解析するため,健常者・切断者の義手使用時の脳賦活状態をfMRIで計測した。その結果,義手への習熟や安定操作がが一次運動野の活動に,能動的に獲得された触覚は錯覚と類似した現象として運動感覚野の活動に影響することを確認した。 3.残存機能探索法の確立 筋電位に同期して電気・機械刺激を行うには,歩行困難者個々に特有の運動感覚系を把握する必要がある。そこで,複数種のセンサデータにより移動状態を計測し,主成分分析を行うことで得られる主値により,個々の移動特性を幾何学的に提示可能とした。また,個々人で異なる麻痺部を補助可能な装置として,ワイヤ牽引型モジュラー装置を開発した。 4.個性適応型情報処理の小型化 筋電義手を日常生活で使用するにはモバイル性の向上が必須である。そこで,個性適応型情報処理を超小型情報処理装置Gumstixへ実装し,8時間以上連続して動作識別可能であることを確認した。今後,本システムを切断者2名(小児・成人)に適用し,日常生活における使用状況を検証する。 5.触覚フィードバックを有する筋電義手の構築 切断者が義手制御を行う際,触覚情報は非常に重要である。そこで,ヒトに与えるエネルギーが小さく,安全にある程度の精度を保って刺激可能な表面電気刺激法を提案し,義手に実装した。現在,刺激種類は単一であるが,圧力,接触位置に応じて異なる刺激を生成可能なシステムの構築を目指す
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