研究概要 |
本研究の目的は, 脳・神経・筋肉の信号源を用いて人と機械の相互通信や意図認識を実現することであり、特にこれらの技術を, 上肢・下肢の運動機能代替や機能回復に応用することである. 今年度の研究成果を以下に示す. 1. 非侵襲生体計測と機能的電気刺激を用いた人・機械相互適応系のモデルの構築 感覚入力のフィードバックを用いて, 義手による把持力を正確に制御するシステムを人に適用し, 構成論的に人・機械相互適応系のモデルを構築するため, ハンドのグローブに多点触覚センサーアレイを内装し, 接触情報を計測可能とした. 加えて, 深部感覚のフィードバックを実現するため, 指関節の屈曲角度を計測可能なセンサシステムを開発し, ハンドに実装した. 次年度も継続して, 提案システムの有効性を検証するとともに, モデルの構築を目指す. 2. 触覚フィードバックを有する筋電義手使用時のfMRIによる脳機能解析 持続的に同じ表面電気刺激を与えると, 刺激を弱く感じるといった順応現象が見られる. この順応現象を抑制する方法論を確立するため, 適切な刺激パターンを組み合わせて与えることで順応現象を抑制可能であるかを, fMRIによる脳機能解析より検証した. その結果提案手法を用いることにより, 順応現象による刺激強度の減弱を抑制することが可能であることを確認した. 3. 残存機能探索法の確立と筋電義手制御への応用 筋電義手をどの程度使いこなせるかどうかは, 残存する機能や習熟の程度により異なる. そこで, 表面筋電位から得られる運動パターンの再現度と精度から習熟を評価する方法論を提案した. 再現度はある動作を繰り返し行ったときの筋活動パターンのばらつき, 精度は識別対象となる全動作の筋活動パターンの特徴空間上での重複度として定義されている. 筋電義手の操作中に習熟度と動作識別率を算出した結果, 2者間に高い相関が見られることを示し, 提案手法の有効性を確認した.
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