本基盤研究では、異種原子層配列制御と同時に非平衡原子層ドーピングを極限まで高度化して、高キャリア濃度・高移動度IV族半導体人工結晶を創成し、Si-Ge系混晶、不純物ドープSiやGe結晶等でのランダムな異種原子配列に起因する局所的な構造・物性のばらつきを抑制する技術を確立しようとするものである。本年度は、原子層オーダで界面が制御された超高移動度IV族半導体異種原子層積層人工結晶膜の実現を目標とし、高Ge組成の高度歪IV族半導体ヘテロエピタキシャル積層について研究を進めた結果、Si_<1-x>Gex層表面の低温SiH_4処理の適用により、高Ge比率(48%)の表面ラフネスを効果的に抑制できることを見いだすと同時に、Ge比率変調構造共鳴トンネルダイオード製作プロセスへの適用により、230K付近まで負性抵抗特性を観測することに成功した。また、不純物ドープIV族半導体の超高キャリア濃度化を目標として、高清浄減圧CVD法による原子レベルで平坦な高濃度B原子層ドープSi薄膜形成について研究を進めた結果、180℃での低温B_2H_6処理とその後の180-300℃での低温SiH_4処理がBクラスタ化の抑制と超高キャリア濃度化に有効であることを明らかにした。さらに、IV族半導体原子層積層膜表面の安定化のために原子層窒化制御について研究を進めた結果、熱窒化SiGe表面においては、熱処理によりGe-N結合が減少し、Si-N結合が増加する傾向があり、窒化膜と基板界面での高Ge比率化が起こることを見いだした。以上のように、化学気相成長原子層積層技術による高キャリア濃度・高移動度IV族半導体人工結晶の創成のために重要な成果を得た。
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