量子カスケードレーザの磁場によるキャリアの低次元化がレーザ発振特性に及ぼす影響を調べるために、昨年度構築した低温・磁場環境下電気・光学特性評価システムを用い、InAs量子カスケードレーザの反転分布数の磁場依存性を測定した。また磁場によるキャリア閉じ込め効果をテラヘルツ帯において検証するため、GaAs/A1GaAsテラヘルツ量子カスケードレーザを作製し、動作機構の考察を行った。加えて温度特性などの面で高性能化が期待できるZnO量子井戸に注目し、世界に先駆けてサブバンド間遷移を観測した。以下にその成果の概要を示す。 (1)InAs量子カスケードレーザの反転分布数の磁場依存性 レーザ発振前後の素子の微分抵抗の変化が反転分布数の大きさに比例することに注目し、InAs量子カスケードレーザの反転分布数の磁場依存性について測定を行った。現在のところ磁場による変化を観測することはできていないが、次年度は印加磁場を10Tまで増大させ実験を行う予定である。 (2)テラヘルツGaAs量子カスケードレーザの閾値電流密度の温度依存性に関する解析 発振波長78μmのテラヘルツGaAs量子カスケードレーザの閾値電流密度の温度依存性に関して解析を行い、縦光学フォノン散乱によりレーザ遷移の基底準位からキャリアを高速に緩和させれば室温でも反転分布形成が可能であることがわかった。 (3)ZnO量子井戸構造におけるサブバンド間光学遷移の観測 低温光電流測定により、ZnO/MgZnO量子井戸構造におけるサブバンド間光学遷移を観測した。k・p摂動法によるサブバンド間エネルギーの計算結果から、観測されたサブバンド間遷移は第1サブバンドから第3サブバンドへの遷移であることがわかった。
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