研究概要 |
今年度は半極性(11-22)GaN基板上のInGaN/GaN量子井戸(QW)構造を現有の有機金属気相成長装置で作製し,その物性を,レーザダイオード(LD)の作製を念頭に評価した. (1)発光効率の向上に向けて:従来は,GaN基板上に作製した(11-22)QWの内部量子効率が,再成長により作製したマイクロファセットQWより劣っていた.本年度は,成長条件を検討し,ほぼ同程度(約30%)の内部量子効率を達成した. (2)偏光特性について:InGaN/GaN半極性QWにおけるバンド構造をk・p理論によって予想した.偏光には,一般に(異方性)歪と量子閉じ込めが寄与するが,InGaN系の場合は,大きな歪により量子効果はほとんど見えないことがわかった.また,歪により,ほぼ直線偏光することが予測された.実際にフォトルミネッセンスやLEDで偏光発光分光を行ったところ,強い偏光が観察され,理論とよい一致を見た.また,歪量の定量として,X線回折逆格子マッピングや透過型電子顕微鏡による評価を行い,歪を表現する新しい表式を提案した.この偏光特性はLDを作製する際には光共振器の方向を決定することに繋がる重要な物性である. (3)LD作製に関連して:LDで用いる電流狭窄構造の作製や共振器ミラーの平行平坦化を目指して,もともと使用していたRIE装置に誘導結合プラズマ(ICP)装置を増設し,ICP-RIEを構築した.本年度は,エッチングの条件を検討した.加工そのものは問題なくできるような条件を見出したが,加工側面の平坦性や垂直性についてはまだ課題が残っており,来年度以降,検討を進める必要がある.
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