理論的アフローチとしては、モンテカルロシミュレーションによる、エミッタコレクタ間距離35nm(エミッタゲート間距離10nm)では、遮断周波数2THz以上が得られることが明らかに成った。このときエミッタのドーピング濃度は3x10^<18>cm^<-3>であり、最大電流密度は3MA/cm^2である。モンテカルロシミュレーションでは、これ以上の高電流密度が現在扱えないが、高電流密度化を行ってエミッタ充電時間下げ、かつ走行幅を非常に小さくした場合において、走行領域長をエミッタゲート間の距離に比例させて小さく出来ると考え、解析的に最高速度を求めた。計算できた範囲ではモンテカルロシミュレーションと傾向が一致し、最大電流密度を上げれば、さらに早い特性が見積もれることが判った。 実験的アプローチとしては、エミッタ幅30nmの半導体メサ形成が可能となった。また、エミッタゲート間距離の制御を決めるプロセスである絶縁層のエッチングにおいて、ゲート・エミッタ間の1nmオーダーでの段差制御を可能となった。これらの結果から、従来よりは制御性の向上が行われ、従来約.5しか無かった伝達コンダクタンスと出力コンダクタンスの比で定義される電圧利得が4倍程度高い約2が得られる様になった。ただし、伝達コンダクタンス・出力コンダクタンス・最大電流密度などはいまだ理論に及んでいない。動作した素子のFIB/SEMによる断面観察から、金でできたゲートが絶縁物内で動いていること、また半導体メサ形状の関係からゲートがメサ直近まで近づいていないことが原因であると思われる。
|