研究課題
今年度は、有機強誘電体とSi基板との組み合わせ、ならびに酸化物強誘電体であるSrBi_2Ta_2O_9 (SBT)とn型の有機半導体であるC_<60>との組み合わせについて検討した。有機強誘電体であるPVDF/TrFE(ポリ弗化ビニリデンと三弗化エチレンの共重合体)に関しては、分極ヒステリシスの周波数依存性を測定することにより、書き込み時間の評価を行った。その結果、測定周波数を100kHzにしても、残留分極の顕著な低下は見られなかった。データの書き込みが主に高電界領域で行われることを考慮すると、データの書き込み時間は1μs以下と推定される。次に、トランジスタの作製を念頭に置いて、Si基板上へのPVDF/TrFE膜の堆積とエッチング特性について検討した。Si基板上に直接堆積した場合(MFS構造)には、リーク電流が大きく良好な容量-電圧特性が得られなかった。一方、SiO_2膜を形成したSi基板上にPVDF/TrFE膜を堆積した場合(MFIS構造)には、良好な特性が得られた。また、酸素プラズマ中でのエッチングでは、分極特性の劣化は大きくないものの、リーク電流が増加することが明らかになった。そこで、酸素にKrを混ぜてエッチングを行った結果、リーク電流に関しても良好な結果が得られた。Krを添加することにより酸素ラジカルのエネルギーが減少することが知られており、この効果により膜の損傷が軽減されたものと考えられる。有機半導体に関しては、大気中で特性が劣化するC_<60>を用いてトランジスタを作製するために、真空中で膜を堆積した後に、そのまま電流-電圧(I-V)特性を評価できる装置を作製した。Si基板をゲート電極、SiO_2膜をゲート絶縁膜としたMOS-FETを作製して特性を評価した結果、良好なFET特性が得られた。次に、Ptをゲート電極、SBTをゲート絶縁膜とするFETを作製した結果、ゲートリーク電流が大きく、トランジスタ特性が評価できなかった。そこで、SBT膜のリーク電流を抑えるために、SBT膜の上下にHfsiON層を挿入した結果、ドレイン電流-ゲート電圧特性にSBT膜の強誘電性に起因すると考えられるヒステリシスが観測された。今後は、特性をさらに改善することが必要である。
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IEEE Trans. on Untrsonics, Ferroelectrics, and Frequency Control 154
ページ: 2592-2594