近年、組織・細胞の活動・反応を内因性光信号や種々の色素プローブを用いて可視化する技術、すなわちバイオイメージングが急速に発展してきた。ただし現在の主流であるCCDカメラやCMOSイメージセンサを用いた装置では、画像処理・転送に多大な時間がかかり、解析はオフラインによって行うため非効率であり、まして刺激系と連動して試料の応答をダイナミックに解析することは不可能である。本研究では、従来のバイオイメージングをさらに一歩進めて、撮影したイメージをリアルタイムで処理し、その情報に基づいて薬物の局所投与や電気刺激を、必要な部位に必要なタイミングで与えることができる全く新しい自動バイオイメージングシステム、すなわち集積知能バイオイメージングシステムの開発を目指した。研究では、脳視覚野スライスを用いたカルシウム感受性色素によるバイオイメージング実験系を確立し、通常のカメラによる計測を行った。この計測結果をPCで処理し、時間遅れで刺激フィードバックする実験を行った。次にこの実験系に対し、独自に開発した128x128画素を有する集積知能バイオイメジャーによる評価実験を行ったが、イメジャーの光センサー部の感度が不十分であった。このため市販のバイオイメージングカメラの撮像部を利用し、これを独自の方法でコントロールし、画像処理を行うアルゴリズムを開発した。このシステムを用いて、視覚野スライス脳からカルシウム信号を計測している。さらにこのシステムの出力を用いて、組織を電気およびレーザーによって刺激する装置を開発した。以上により、集積知能バイオイメージングシステムの基本構成が完成した。
|