研究概要 |
1.実用規模の分離型磁気シールドのシェル部分の試作を完了した.左右対称な2つのシェルからなり,0.35mのスペースを保って対向配置することによって,シールド空間となるボア(円筒状)の直径は0.65m,ボア軸方向長さは2.4m,高さは〓1.3m(内上下フランジ部分の高さ0.32m)で,アモルファス磁性薄帯の使用量はシェルあたり約50kgである.シェルの構造は3つの独立したアモルファス層からなり,外側2つのアモルファス層にはシェイキング用のコイル導線を編み込んでいる.これらの構造は,エポキシ樹脂とガラス繊維,炭素繊維でFRP一体構造に仕上げられている.1つのシェルの重量は180kg程度でキャスターでの移動が可能である.これに合わせて,16chSQUID用ガントレーをシールドの上を跨ぐ構造で,金属を一切使用せず角材で製作した.同様に,木製ベッドを製作した. 2.SQUIDは同軸状の1次差分形であり,感度軸は鉛直方向である.上記磁気シールドの鉛直方向シールド比は能動補償をしなくても30程度あるためSQUIDはFLL動作することが確認できた.そのままでは生体磁気を計測できるレベルでは無いが,能動補償制御系の調整を容易にする. 3.水平方向補償コイル(分離面に垂直な磁界成分の補償用)の上下コイル導体間隔を大きくすることにより必要な補償電流が減少することを1/3サイズのモデルで明らかにした.コイル導体を中央付近からフランジ部先端に近く配置することにより,10μTの模擬外乱磁界に対して,6.7Aターン(実験値:8.2Aターン)から2.7Aターン(同:3.0Aターン)へ低減できることが分かった. 4.能動補償のために,高分解能直交フラックスゲート(FG)(7-8pT√<Hz>@10Hz)を開発し,水平方向の能動補償実験を実用規模シールドによって実施した.センサをシールド中心に配置しPI制御フィードバックにによって,0.5Hz-60Hzにわたって30dB程度の能動補償効果を得た.地磁気に対しては33.6Aターンの補償電流で10nT以下まで低減することに成功した.
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