研究概要 |
1. 実用規模分離型磁気シールド(ボア直径0.65m,長さ2.4m,高さ1.4m,重量約360kg)の床面水平方向と垂直方向に対してフィードバックPI制御器を試作した.外乱磁界を検出するセンサをボア中心軸上でシールド中心から0.2m離して水平・垂直の2チャネル分置いた.シェイキングによって磁気シェル(磁性層)の透磁率を高めた状態で,垂直方向では100Hzまでシールド比1000以上,水平方向では10Hzでシールド比90,100Hzで同70程度を達成した.また,シェル側方の近傍外乱磁界に対しても補償可能なことがわかった. 2. SQUIDへのRF雑音の悪影響を低減するために新たに電磁シールド(床面と天井側の広さ2×4m,側面高さ2.5m)を付加した.床面は厚さ1mmの銅板で,天井は厚さ2mmのパンチングアルミ板で構成し,側面は銅メッシュで製作した.これによってSQUIDの動作が各段に安定し,心磁界の波形計測に成功した.ただ,400Hzのシェイキング漏洩磁界が500pTを越えていたために,FLLは飽和しないが,後段のアナログ信号処理回路(ASP)のアンプが飽和しMCG計測までは至らなかった. 3. 環境磁界の24時間にわたる計測を簡単に実施する方法を開発した.一辺1.7mの比較的大きな正方形ピックアップコイルを短絡モードで増幅し(370mV/nT),60Hzの電源周波数磁界の振幅変動を包絡線検波する.これによって列車など遠方の外乱源に起因する雑音変動が精度良く長時間記録できることを示した. 4. (問題点の整理)分離型磁気シールドのシェル構造に左右非対称性がありシェイキング磁界の漏洩を充分に抑制できずMCG計測ができなかったが,シェイキングを受けるシェルの端部構造の改良,導体板を取り入れたシェルの多層構造の改良が必要である.また,FLLは飽和しないのでASP回路の前段に400Hzを遮断するするフィルタの挿入が基本的解決法となると期待できる.
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