本研究では、細胞から生体一分子を機能を損なうことなく抽出・分離・集積し、その機能観察および計測をリアルタイムで行うマイクロ流体システムの構築を目的としている。今年度は、まず、対象とする細胞を1個単位でトラップし、培養できるマイクロ流体システムについて研究を行った。マイクロ流路に半円型の細胞とラップ構造を設けることにより、1細胞単位で培養できるデバイスを試作確認したが、同じ流路から培養液を導入するとトラップした細胞の離脱が起こることがわかった。そこで、細胞導入流路と培養液流路を分離し膜で隔てる構造にすることでこの問題を解決し、長時間の安定な培養が行えるデバイスを作成できた。次に、特定の細胞より内容物を抽出するデバイスについては構造の改良を行うことにより、オルガネラ・リボソームの抽出効率を向上した。また、細胞・生体分子の分離・収集を目的とした1入力-2出力型マイクロソータの並列化・最適化について研究を進め、PDMS2層+ガラス基板の構造に3次元並列流路を形成した8並列構造のマイクロ流体システムを作成した。これにより、E. coIi Gellの分離について応答速度10-20msec、成功率85-95%を実現できた。さらに、これまでの1入力-2出力型ソータでは同時に多種類のソーティングが行えないため、これまでの知見を元に1入力-4出力マイクロソータの基本構造設計を行った。一方、マイクロ流体システムのマルチ化による高機能化について、多数の培養用マイクロセルや前処理リアクタ等に多種類の薬液を送るマイクロバルブシステムが不可欠である。集積回路のメモリのアドレスラインの考え方を応用して少ないコントロールラインで多数のバルブを独立に制御できるニューマティク型マイクロバルブアレーをPDMSの多層構造で実現した。
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