本研究では、細胞から機能を損なうことなく生体分子を抽出・分離・集積し、その機能観察および計測をリアルタイムで行うマイクロ流体システムの構築を目的としている。今年度は、効率化をはかるため引き続き多数の細胞を1個単位でトラップし、培養できるマイクロ流体システムについて研究を行った。CFD解析を用い流路の構造や並列化構成を最適化することにより、512個のトラップ構造に80%以上の確率で細胞を固定できた。また、細胞導入流路に蛍光ラベル剤や界面活性剤を流すことにより、識別可能な生体分子の抽出がこうりつてきに行えることを確認した。次に、細胞から抽出した生体分子の分離・収集を目的とし、同時に多種類の生体分子を分離するマイクロソータについて研究を進め、1入力-4出力のデバイスを試作した。3種類の蛍光タンパクラベル化したE.coli Cellの分離を応答速度10-20msec、成功率80%以上で実現できた。一方、マイクロ流体システムのマルチ化による高機能化について、多数の培養用マイクロセルや前処理リアクタ等に多種類の薬液を送るマイクロバルブシステムが不可欠である。集積回路のメモリのアドレスラインの考え方を応用して少ないコントロールラインで多数のバルブを独立に制御できるアドレス型とマルチプレクサ型の2種類のニューマティク型マイクロバルブアレーを試作した。アドレス型ではm+n本の圧空コントロールラインでm×n個のバルブを、マルチプレクサ型では2n+2本の圧空コントロールラインで2n個のバルブを制御できる。2つの方式で256個のバルブを集積化したマイクロバルブアレイを作製し、大規模マイクロ流体システムの制御プロトコルを確認した。その他、1plオーダーの極微量試薬を定量するマイクロチャネルと試薬を液滴として搬送するマイクロチャネルから構成されるマイクロ流体デバイスを試作・評価した。
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