研究概要 |
本研究は,軟弱地盤中の橋梁基礎を対象に,地盤改良などの莫大な費用を必要とする既存の液状化対策に頼るのではなく,超高耐力を有する鋼・コンクリート複合杭基礎構造の開発と,多連オンライン実験システムを用いた液状化地盤の震動予測精度の向上により,恒久的に弾性限界までの応答しか許容しない,新しい杭基礎構造の耐震設計法の構築を目的とする. 橋梁は,地震後における救助・救急活動および被災地への緊急物資の輸送路として非常に重要な役割を担うため,地域社会生活に支障を与える地震後の機能低下をできるだけ抑制する必要がある.この思想を受け,現行の各種耐震設計規準では,兵庫県南部地震級のレベル2地震動の作用に対し,橋脚基部に主たる塑性化を限定的に発生させ,修復を行い得る範囲で地震エネルギーの吸収を図り,支承部,基礎などは基本的に弾性限界を超えさせない損傷シナリオを基本としている.しかしながら,液状化の影響により地盤の水平反力が十分に期待できないような場合には,経済性への配慮から,基礎の降伏を許容せざるを得ない場合が多々存在する.この場合,何よりも危惧されるのは,基礎に生じる地震時の変形および地震後の残留変形による車両走行性への影響であり,軟弱地盤地点に架かる橋梁の修復作業のために道路や鉄道ネットワークの機能麻痺が長期にわたり生じることである.そのため,液状化の発生の有無に関わらず,基礎構造は恒久的に弾性限界内までの応答しか許容せず,修復が容易な橋脚基部に主たる塑性化を生じさせる耐震設計が望まれる. 以上の背景のもと,本研究は,交通ネットワークの弱部となり得る液状化地盤に架かる橋梁に着目し,その地震後の機能低下の回避を目的として,超高耐力を有する鋼・コンクリート複合杭基礎構造の開発と,多連オンライン実験システムを用いた液状化地盤の震動予測精度の向上により,液状化地盤中の新しい杭基礎構造の耐震設計法を構築する.この実現のため,核となる超高耐力杭体を開発し,その耐震設計法を提示する.
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