本研究では、新たな鉛直モニタリングシステムを開発し、それを用いて、微細粒径土砂成分等の陸域からの輸送を定量評価することで、沿岸域における水質モニタリングを高精度化すると同時に、沿岸域における物質循環を、微細粒径土砂成分も含んで明らかにすることを目的にしている。 モニタリングシステムの特徴は、既往の機器を効率よく連携させ、鉛直プロファイルの測定を可能にする、またテレメーターによって外部にリアルタイムで測定結果をモニターすると同時に、計測プロトコルを状況に応じて変更可能にしてある点である。今年度は開発中のモニタリングシステムにより、土砂フラックスを定量化するための試みとして、フラックスの定量化と比較が容易な石垣島を候補地として選定して、予備的な現地計測を実施した。観測においては、降雨時のイベント的な土砂輸送を捉えるために、10分間隔で、長期のモニタリングを実施した。また、それらを補足するために2週間程度の観測を年間数回行った。この際、河口部の形態や河川流域の土地利用の違いにより生じる土砂フラックスの違いを明らかにするために、3つの河川を選択して、同時に観測を行った。これにより、河口部の形態が土砂輸送に与える影響や、河床に堆積した微細粒径土砂成分が、先行晴天日数によってその量が大きく異なることや、同規模の降雨であっても先行晴天日数によって、物質フラックスは大きく変化する様子を捉えることができた。このような結果は、年に数回のイベント的な出水を集中的に計測しただけでは、把握できないものである。さらに、対象域を沿岸域や湖にも広げるために、2007年冬より、上記の観測システムを東京湾、手が沼にも設置して、現在も沿岸域の微細粒径土砂成分の定量化を継続中である。
|